追放された聖女を待ち受けていたのは、エリート魔法師団長様との甘やかな実験の日々でした
「どういう状況か教えてくれるか?」

「はい! つい十五分程前に異変を確認し監視していましたところ、魔物の群れを確認しました。そして領主邸へ報せを入れ現在に至るのですが、予想以上に魔物の進行スピードが速い状況です」

「城壁を守護する騎士たちは?」

「城壁の守りを継続する部隊、領民の避難誘導にあたる部隊、外で魔物を食い止める部隊、この三部隊に分けて行動中です」

「父上は?」

「私に城壁を任せ、領民の避難誘導へ向かわれています。領主として顔が知られている父上の方が領民にとって指示を受け入れやすいだろうという判断です」

「わかった。今、魔法師団の者達が王都へ向かっている。もうしばらくすれば王都の騎士団から加勢があるはずだ」

「それは心強い……!」

明らかにホッとした表情となった弟は、肩の力をゆるゆると抜いた。立場上、部下の前では弱気な姿は晒せず相当気を張っていたのだろう。

「では加勢があるまでここの守りを頼む」

「兄上はどちらへ……?」

「私は外で魔物を食い止める部隊に加勢する。大規模魔法を放てば、かなりの数を削れるはずだ」

私はそう告げると、遠見魔法を発動して部隊の現在地を探す。城壁への突撃を阻止するため、かなり遠いところで戦っているようだ。

残念ながら瞬間移動魔法は一度行ったことのある場所へしか飛べない。部隊がいるところへは走って行くしかなさそうだ。

「では行ってくる」

「兄上、お気をつけて……!」

最後に鼓舞するよう弟の胸を叩き、私は城壁の階段を駆け降りて、出口から外へ出た。

サラバン帝国との国境地帯であるそこは、乾燥した草花が目立つ荒野が広がっている。開墾されていない土地のため、もちろん舗装された道などない。

足場の悪い道なき道を部隊に向かって進む。

途中で襲ってきた単身の魔物は、魔法をぶっ放して確実に処理していった。

だが、次第に私はある異常に気づく。

 ……おかしい。先程までこの辺りには魔物はまばらにしかいなかったのに、明らかに増えている。
< 92 / 141 >

この作品をシェア

pagetop