恋は揺らめぎの間に
「………」
慎司君は、彼氏なのだろうか。
彼氏というのは、お付き合いというのは、好きだという告白から始まるものではないだろうか。一概にすべてがそうだというわけではないだろうが。少なくとも私と慎司君は、好きだと伝えあったことはない。そもそも慎司君を好きだと、言い切ることはできない時点でお付き合いをしているといえるのか。かといって、夏木君を忘れるために利用する、されるの関係だと、割り切ることもできないほどに情はある。
「ごめん、答えにくい質問だったよね。」
夏木君はにっこり笑う。
「でも、彼氏だって言い切れる相手がいないなら、いいかな? 静香ちゃんって呼んでも。」
「…うん。」
「ほら静香ちゃん、お箸止まってるよ。 美味しいうちに食べよう。 まだ行きたいところがあるんだ。」
夏木君は慣れたように私をエスコートしてくれた。イルミネーションを見て、クリスマスマーケットにも行って。屋台に置いてあった外国の装飾品で笑わせてくれた。ステージではオペラがあっており、お互い初めて見るそれに心奪われた。
キラキラの背景に相まって、夏木君…もとい慶人君もキラキラして見えた。本当に王子様のように。
「僕、ずっと悔やんでいることがあって。」
ステージを見つめながら、慶人君がぼそりと呟いた。