恋は揺らめぎの間に



「いや〜。 講義は面白いんだけど、参考にはならないと思うよ。 高次元過ぎて、聞いててよくわからないから。」

「ええ〜…。」



一華ちゃんと一緒に、うーんと上を向いて考える。



「…試しに付き合ってみる?」



一華ちゃんがちらっとこちらを見てくる。



「その場合慎司君とは? 」

「今のままよ。 だって、付き合ってないんでしょう? それじゃあただの同居人じゃない。」

「それ、いつも私のことを悪女呼ばわりする人の台詞としてどうなんですか?」

「だって初恋の君と付き合ってみたら、やっぱり違う!私、慎司君のことが好きだったんだわ!ってなった時に、戻りやすいと思わない?」

「それ、本当に戻れると思ってる?」

「でも、初恋の君が折角告白してくれたんだから、ここで断っちゃったら、本当にそれで終わりだよ? 静香はそれでいいの? 結局慎司君をしても忘れられなかったんでしょ?」



確かにそうだ。忘れかけていたけれど、結局忘れられなかった。会ってその顔を見てしまったら、まだあの頃のようにドキドキする自分がいる。

………本当に、どうしよう。

一華ちゃんは色々な案を出してくれた。早めの年越しそばを食べながら、一緒にお風呂に入りながら、なんだかんだ一緒に悩んでくれた。それでも、答えはでなかった。


テレビから、新年を告げる声がする。

除夜の鐘が最後の1回を突き終わった時、一華ちゃんが言った。



「私達、煩悩塗れのまま、年越しちゃったね…。」



あまりにしみじみ言うものだから、笑ってしまった。









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