恋は揺らめぎの間に
寒がりな慎司君。今日ももこもこに着込んでいた慎司君。だけど、バイクに乗るからと私に上着を貸してくれた。入念にヘルメットもチェックされる。
「んむぅ。」
何故か、ほっぺたも。
顎の紐を確認した手で、なぜか頬を摘まれて。ひょいと抱き上げられて、バイクへ乗せられた。
慎司君も跨り、ブオンッとエンジンが鳴る。慎司君の背中を掴んでいた手をお腹へと回されて、頬がむにっと押しつぶされたと同時にバイクは走り始めた。
初めて乗ったけれど、怖くなかった。不思議と安心感の方が強かった。
慎司君の広くて温かい背中。着込んでいてもわかる筋肉。もともと背も高くがっちりしていたけれど、仕事を始めてからまた一段と大きく、逞しくなった背中が心地よかった。
すり、と頬を寄せると、慎司君がピクッと反応するのが、また面白かった。
「わあっ、凄い人!」
「静香。」
こっち、とナチュラルに手を繋がれて、参道へと並ぶ。連れて来てくれたのは、家から程よい近さにある、たまにテレビでもとりあげられている有名な神社だった。
参道に押し寄せる人で、慎司君との距離が近くなる。ちらっと見上げると、視線に気づいた慎司君はん?と首を傾げた。
「…何で私と、初詣に来たかったの?」
今なら何でも聞けてしまいそうな雰囲気に、流されることにした。
「バイクも、何で乗せてもいいって思うようになったの? 私、さっきも言ったけれど、無理はしてほしくないの。」
黙っていた慎司君だったが、マフラーを引っ張って口元を隠すと、なにかもごもごと喋り始めた。
「バイクは、ずっと乗せたいと思ってたけど…。」
「けど?」
「万が一を思うと…。」
怖くて、とぼそっと呟かれた言葉に呆れてしまう。
要は私に万が一のことがあったらと思うと、心配で乗せられなかったってこと?
これは怒る気も失せるというものだ。