恋は揺らめぎの間に
食事会は間もなくお開きとなった。弾む会話もないので、食事が済み次第店を出ることになったのだ。
「それじゃあ、私はこっちだから!」
一華ちゃんが言うと、傍にいた慎司君がすっと一華ちゃんの方へ行った。
「俺、家まで送ります。」
バイクだし、と付け加える慎司に驚く。
「え!? いやいや、いいよ! そこはさ、私が座るとこじゃないでしょう? それに私、慶人君に送ってもらうから!」
「え?」
戸惑う慶人君の腕をグイグイ引っ張りながら、一華ちゃんは手を振る。
「それじゃあおやすみなさい! 慎司君、ごちそーさまでした!」
一華ちゃんの目が、ちゃんと話せと言っている。私は二人の姿が見えなくなるまで見送ってから、慎司君を見た。今日初めて、真っ直ぐに見た。慎司君も、今日初めて、私を真っ直ぐに見てくれた。
慎司君はぎこちない動きで、ヘルメットを差し出す。
「…乗る?」
「…乗ってもいいなら。」
慎司君にぎゅっとしがみつく。慎司君を間近に感じるのは、遊園地から帰ってきたあの日以来だった。それはそんなに長い間ではなかったが、こうしてくっついていると、こうしていることがとても懐かしく感じた。
私はそれくらい慎司君と、時間を共にしたんだ。
それまで当たり前だと思っていた慎司君の存在と優しさを、初めて当たり前ではないと感じた。それと同時に、貴重な時間を私に使ってくれている慎司君の想いの大きさも、初めて知る。
慎司君の何気ない動作に、私への気持ちを感じる。
ずっと気づかなかった…いや、目を背けていただけかもしれない。本当は気づいていた。いつも…こうしてヘルメットを脱がしてくれた時もそうだ。慎司君はいつも、宝物か何かに触れるように慎重に、大切に、私に触れてくれる。
「慎司君は……」
ヘルメットがとれて視界が開け、慎司君と目があった時、私は聞かずにはいられなかった。
「私のこと、好きなの…?」