恋は揺らめぎの間に
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「こんにちは、花江さん。 珍しいね。 今から学校?」
クリスマスを目前に控えた日のお昼。さあ今から学校に行こうとした所で彼に会った。
「夏木君…。」
「奇遇だね。 よかったら一緒に行かない?」
扉を開けたら彼もちょうど家を出るところなんて、とんだ偶然があるものである。こちらは年末にかけて忙しくなった慎司君と、同じ家に住んでいてもゆっくり話す機会がないというのに。
慎司君は今日は非番だけど用事があるとかで、朝早くから出かけていた。
「もう冬休みなのに偉いね。 何をしに行くの?」
「年明けの発表会に向けてレポートをちょっと。 夏木君は?」
「僕はサークルに。」
「サッカーの?」
夏木君はフハッと笑い出す。
「確かに高校ではしてたけど、今は趣味程度でやってるくらいだよ。 大学では保育のサークルに入ってる。 そういえば…高校の時はよく応援しに来てくれてたよね。」
「えっ!?」
「あれ? え、違った…!?」
恥ずかしいなと、口元を隠す夏木君。
いや、間違いなどではない。当時の友人の中にサッカー部に彼氏がいる子がいて。その付き添いと称して、実は夏木君を見に行っていた。けれど、大勢人がいる中で私が来ていたことに気づいていた?
嘘でしょう!?と、カーッと顔が赤くなる。当時の私がこのことを知ったら卒倒しそうだ。
「ごめん、今の忘れて! 勘違いだったかも……」
「…勘違いじゃないです。 ごめんなさい。」
「え!? 何で謝るの!? 応援、嬉しかったよ。 ありがとう。 お礼を言うのが遅くなって、こちらこそごめんね。」
ああ、この人は。
こういうところだと思う。女子をたらしこむ、こういうところ。