恋は揺らめぎの間に
懐かしい、夢を見た。
「花江さん花江さん。 花江さんなら、これ、わかると思うんだよね。」
放課後。西陽が指す教室で、夏木君が話しかけてきたことがあった。数学の補講の後のことだった。
少しでも夏木君を見ていたくて、当時の私は、補講の時は後ろの席に座るようにしていた。帰りの用意はゆっくりして、彼の後に教室をでるのだ。そして、自転車で帰ってしまう彼の後ろ姿を見て、一日を締めくくる。そんなルーティンを本人に壊されたことがあった。
ニコニコ笑いながら、机にガシャポンが並べられる。
「これ、花江さんに。」
「え? いいの? 何で? どうして?」
「好きだと思って。」
1つ夏木君が開けて見せてくれた。中に入っていたのは、栞にも描いた少女アニメのグッズだった。
「それどうしたの!?」
「姉がダブったって言ってたから、もらってきた。 ごめん、もしかしてもう持ってた?」
私は首をブンブン横に振った。
「こんなの出てたなんて知らなかった! 本当にもらっていいの!?」
「貰ってくれないと困るかな。」
胸がキューーーンと締め付けられた。
「ありがとう! 大切にする!」
その後も度々そういうことがあって。それらをまだ大切にとっておいてあるなんて慎司君に知られたら……
「…幻滅するよね。」
夜明け前。夏木君にどう返事を返すか悩みながら眠ったせいか、よく眠れずに目が覚めて、夢の内容を思い返していた。
手元には、例のアニメのキャラクターの缶。中には沢山のグッズがしまってある。もちろん夏木君からもらった品々も、しまってあった。