サイコな結婚詐欺師は恋に仕事に子育てに今日も忙しい。
6.リーザ、ハニートラップを仕掛ける。
私は今のいままで自分を面食いだと思っていたのは勘違いだったようだ。
今、私に話し掛けてきた彼は多くの女が一目惚れしてもおかしくないくらいのルックスだ。
しかし、心は驚く程静かだった。
私は自分が価値がある女だと思われる為に顔の良い男を隣に置いていただけだったのだ。
エスパルの平民という虫けらのように扱われる存在に生まれたことへの反発だ。
軽視される自分の命を隣にイケメンを置くことで、
「私に夢中なイケメンがいるぞ、私には価値があるぞ」と神に叫びたかったのだ。
でも、伯爵や宰相など価値のある職を得た今、男で自分の価値証明をする必要がなくなった。
途端に顔の良い男の価値は顔だけが良い男という些細なものに変わった。
「申し遅れました。私はマリオ・ロベルと申します。レディーの可愛らしさに思わず声を掛けてしまいました」
ロベル侯爵が色気が漂う声で私に自己紹介してくる。
その魅了されそうな声にも、なぜだかより心が冷却されてくるのが分かる。
下心が見え隠れしているのだ、私自身が狙いか私の先程得た地位を知った上での目的があって話しかけてきているのか見定める必要がある。
「リーザ・スモアと申します。見ての通りエスパル出身です。成人したばかりですがチャンスと思い試験を受けにきたところだったんです」
私は彼が私が誰か知りながら話しかけてきたものか罠を仕掛けた。
私が誰か知っていたら私がいくら私の見た目が18歳でも実は31歳だと知ってるはずだ。
「成人したばかり! お、お若くて帝国に出てくるのは勇気がいったのではないですか?」
ビンゴだ。
明らかに彼は狼狽ている。
私の試験の出願書を彼は見た上で、偶然を装って話しかけている。
31歳という年齢を知っているのに私が18歳だと言っていて驚きが隠しきれていないのだ。
彼は誰なんだろう。
エレナ・アーデンの渡してきたリストの1人の可能性もある。
「不慣れなもので、マナー的に正しいのかも分かりませんが、お名前を伺っても宜しいでしょうか?」
私は不安そうな表情を取り繕いながら、彼に尋ねた。
「マリオ・ロベルと申します。レディーのお名前を伺ってもよろしいですか?私はすでにレディーに心を奪われてしまったのです」
彼が胸を手で抑えながら苦しそうに伝えてくる。
私は目を見るだけでも、本当に恋しているかどうかぐらいは分かる。
彼は私を騙そうとしている、でもここはそれが気がつかないような愚かな女を演じなければならない。
マリオ・ロベルは行政部で部屋を与えられる位に重用されていていたのに、この度解任された侯爵だ。
エレナ・アーデンが私に渡した書類の中に彼の情報が含まれていた。
「リーザと申します。私も一目であなたに心を奪われました。マリオ様、もう苦しいの、私の誰にも言えない秘密をあなたに打ち明けても良いですか?」
私は目を潤ませながら、まるで今恋に落ちてどうしようもなくなった愚かな女のように振る舞った。
「人に聞かれてはまずいものですよね、どうぞ私の執務室にご案内します。そちらでお話をしましょう」
彼は自分の魅力で私を魅了できたと思っているのだろう。
満足げに私を自分の執務室へとエスコートする彼に笑いを堪えるのが大変だった。
ここは、彼が今日立ち去らなければならない執務室だ。
荷物がないのも当然だ、ここは彼が皇宮で要職についてた際に与えられていた部屋だ。
おそらく、もうここを立ち去るためにほとんどのものを移動している。
「ふふ、男性と2人きりになるのはなんだか気恥ずかしいです。」
できる限りか弱く可愛らしい声を使いながら、不安げに彼を見つめてみた。
私は出来る限りウブな女を演じることにした。
その方が彼のガードが緩くなり、必要な情報を引き出せる気がしたからだ。
「何か如何わしいことをしようなんて気持ちはありません。私は侯爵です。帝国貴族として恥ずべきことは決して致しません」
彼から既に知ってい彼が侯爵であるという個人情報を引き出すことができた。
もっと、私が必要な情報を出さなければエレナ・アーデンが満足するような情報を。
私は現在、伯爵位を持っている。
私以上の爵位を持つものが私に自分の身分を隠して近付いてくるのは意味があるはずだ。
私より下位の爵位のものであれば私と婚姻関係を結びその後、暗殺して爵位を手に入れようという算段の可能性がある。
それは女性が爵位を継いだ際に度々エスパルでも行われていたことだった。
女性が爵位を持ってしまった場合は夫に爵位が渡ることが多い。
男性が爵位を持ったもまま死んだ場合、妻に継承されることはなかった。
息子がいた場合は彼に継承され、いない場合は親戚の男を連れてきて爵位譲った。
私は自分が伯爵位を得た時点で、そのリスクを考慮した。
爵位目当ての男には気を付けるべきだと。
しかし、侯爵位を既に持っているロベル侯爵はそうではない。
私に恋する演技をできているつもりであろうが、大根役者だ。
そんな彼が私に近づく理由は一つしかない。
彼は現政権に不満を持っているのだ。
私が宰相になった事実は私からは、まだ誰にも告げてはいない。
しかし、彼は確実に知っている。
おそらくアーデン侯爵令嬢はわざと彼に情報を流したのだろう。
私が任命された書類は面接時には既に作成されていたのは確実だ。
あの場でアーデン侯爵令嬢はサインしかしていなかった。
私を宰相にすることは最終面接前から決まっていたのだ。
そして、彼女が私に渡した貴族のリストは貴族たちのこの度の異動記録と詳細だった。
少なくない帝国貴族が要職を解かれていた。
領地を持つ彼らの中には、その領地さえ召し上げられた者もいる。
目の前にいる、一際色男のロベル侯爵領地召し上げられてはないものの要職を解かれている。
侯爵位という高位貴族の彼がそのことで不満を持ち反逆でも起こすとアーデン侯爵令嬢は考えているのかもしれない。
反逆を企てている証拠を集めろということなのだろうか。
でも、既にこれはアーデン侯爵令嬢がある程度の証拠を掴んでそうだ。
正直、相手が楽勝すぎて、これが私にしかできないこととは思えなかったが最低でもこなすタスクだと認識した。
「私、実は嘘をついているんです。帝国で要職に就ければ子供に最高の教育を受け入れられると聞いた親戚に2人の子を押し付けられて試験を受けたんです」
ロベル侯爵はよっぽど自分の魅力に自信があるのだろう。
自分の私への誘惑が成功したと勘違いして私の話を真剣に聞いている。
愚かな女のフリは一番得意だ。
私はただのエロ親父でしかないマラス子爵の自尊心を満たすため、13年も愚かで馬鹿な女を演じ続けたのだ。
「辻褄を合わせるように31歳だなんて応募書類に書いて、本当は成人したばかりの右も左も分からない小娘なのに⋯⋯」
私はまるで自重するような苦笑いを浮かべた演技をして、彼に救いを求めるように見つめた。
明らかに、彼の瞳に動揺が見られる。
こんなに頭の弱い男に素敵な顔面を与えるなんて神はお遊びが酷い。
この世界はただでさえ不公平なのだから、中身と外見くらいは比例させるべきだ。
「今とっても不安なの。実は先程帝国の宰相に任命されたのです。私は政治のことなど何もわかりません」
私がか細い声を使いポツリポツリと秘密を打ち明けるように彼に囁いた。
ロベル侯爵の目がきらりと光った。
やはり、彼は既に私が宰相に任命されるだろうことを知って近づいたのだ。
「きっと、敵国エスパル出身の女性宰相誕生ということで、皇帝陛下は侵略した他国出身の民に公平性をアピールしたいのでしょう」
彼に恋したふりをしたふりをしながら、その藍色の濁った瞳を見つめながら語る。
彼は帝国の貴族だ、おそらく私のような敵国出身の女宰相の誕生の人事の理由を公平性のアピールのためだと考えているだろう。
彼が自分の思想を私に告白しやすいように、私は人事に不満を持っているふりをした。
彼が爵位を剥奪されていないのは、おそらくアーデン侯爵令嬢に泳がされている。
皇帝陛下に反感を持つ人間を根こそぎ排除したいのだろう。
自分でも容易くできそうなのに、書類を見るに私にやらせようとしている。
彼女が私に渡した軽い課題の1つなのだろう。
「あなたを愛していますリーザ。可哀想にこれからは私があなたについていますよ」
ロベル侯爵が私を机に押し倒そうとしながら耳元で囁いてきた。
今、私に話し掛けてきた彼は多くの女が一目惚れしてもおかしくないくらいのルックスだ。
しかし、心は驚く程静かだった。
私は自分が価値がある女だと思われる為に顔の良い男を隣に置いていただけだったのだ。
エスパルの平民という虫けらのように扱われる存在に生まれたことへの反発だ。
軽視される自分の命を隣にイケメンを置くことで、
「私に夢中なイケメンがいるぞ、私には価値があるぞ」と神に叫びたかったのだ。
でも、伯爵や宰相など価値のある職を得た今、男で自分の価値証明をする必要がなくなった。
途端に顔の良い男の価値は顔だけが良い男という些細なものに変わった。
「申し遅れました。私はマリオ・ロベルと申します。レディーの可愛らしさに思わず声を掛けてしまいました」
ロベル侯爵が色気が漂う声で私に自己紹介してくる。
その魅了されそうな声にも、なぜだかより心が冷却されてくるのが分かる。
下心が見え隠れしているのだ、私自身が狙いか私の先程得た地位を知った上での目的があって話しかけてきているのか見定める必要がある。
「リーザ・スモアと申します。見ての通りエスパル出身です。成人したばかりですがチャンスと思い試験を受けにきたところだったんです」
私は彼が私が誰か知りながら話しかけてきたものか罠を仕掛けた。
私が誰か知っていたら私がいくら私の見た目が18歳でも実は31歳だと知ってるはずだ。
「成人したばかり! お、お若くて帝国に出てくるのは勇気がいったのではないですか?」
ビンゴだ。
明らかに彼は狼狽ている。
私の試験の出願書を彼は見た上で、偶然を装って話しかけている。
31歳という年齢を知っているのに私が18歳だと言っていて驚きが隠しきれていないのだ。
彼は誰なんだろう。
エレナ・アーデンの渡してきたリストの1人の可能性もある。
「不慣れなもので、マナー的に正しいのかも分かりませんが、お名前を伺っても宜しいでしょうか?」
私は不安そうな表情を取り繕いながら、彼に尋ねた。
「マリオ・ロベルと申します。レディーのお名前を伺ってもよろしいですか?私はすでにレディーに心を奪われてしまったのです」
彼が胸を手で抑えながら苦しそうに伝えてくる。
私は目を見るだけでも、本当に恋しているかどうかぐらいは分かる。
彼は私を騙そうとしている、でもここはそれが気がつかないような愚かな女を演じなければならない。
マリオ・ロベルは行政部で部屋を与えられる位に重用されていていたのに、この度解任された侯爵だ。
エレナ・アーデンが私に渡した書類の中に彼の情報が含まれていた。
「リーザと申します。私も一目であなたに心を奪われました。マリオ様、もう苦しいの、私の誰にも言えない秘密をあなたに打ち明けても良いですか?」
私は目を潤ませながら、まるで今恋に落ちてどうしようもなくなった愚かな女のように振る舞った。
「人に聞かれてはまずいものですよね、どうぞ私の執務室にご案内します。そちらでお話をしましょう」
彼は自分の魅力で私を魅了できたと思っているのだろう。
満足げに私を自分の執務室へとエスコートする彼に笑いを堪えるのが大変だった。
ここは、彼が今日立ち去らなければならない執務室だ。
荷物がないのも当然だ、ここは彼が皇宮で要職についてた際に与えられていた部屋だ。
おそらく、もうここを立ち去るためにほとんどのものを移動している。
「ふふ、男性と2人きりになるのはなんだか気恥ずかしいです。」
できる限りか弱く可愛らしい声を使いながら、不安げに彼を見つめてみた。
私は出来る限りウブな女を演じることにした。
その方が彼のガードが緩くなり、必要な情報を引き出せる気がしたからだ。
「何か如何わしいことをしようなんて気持ちはありません。私は侯爵です。帝国貴族として恥ずべきことは決して致しません」
彼から既に知ってい彼が侯爵であるという個人情報を引き出すことができた。
もっと、私が必要な情報を出さなければエレナ・アーデンが満足するような情報を。
私は現在、伯爵位を持っている。
私以上の爵位を持つものが私に自分の身分を隠して近付いてくるのは意味があるはずだ。
私より下位の爵位のものであれば私と婚姻関係を結びその後、暗殺して爵位を手に入れようという算段の可能性がある。
それは女性が爵位を継いだ際に度々エスパルでも行われていたことだった。
女性が爵位を持ってしまった場合は夫に爵位が渡ることが多い。
男性が爵位を持ったもまま死んだ場合、妻に継承されることはなかった。
息子がいた場合は彼に継承され、いない場合は親戚の男を連れてきて爵位譲った。
私は自分が伯爵位を得た時点で、そのリスクを考慮した。
爵位目当ての男には気を付けるべきだと。
しかし、侯爵位を既に持っているロベル侯爵はそうではない。
私に恋する演技をできているつもりであろうが、大根役者だ。
そんな彼が私に近づく理由は一つしかない。
彼は現政権に不満を持っているのだ。
私が宰相になった事実は私からは、まだ誰にも告げてはいない。
しかし、彼は確実に知っている。
おそらくアーデン侯爵令嬢はわざと彼に情報を流したのだろう。
私が任命された書類は面接時には既に作成されていたのは確実だ。
あの場でアーデン侯爵令嬢はサインしかしていなかった。
私を宰相にすることは最終面接前から決まっていたのだ。
そして、彼女が私に渡した貴族のリストは貴族たちのこの度の異動記録と詳細だった。
少なくない帝国貴族が要職を解かれていた。
領地を持つ彼らの中には、その領地さえ召し上げられた者もいる。
目の前にいる、一際色男のロベル侯爵領地召し上げられてはないものの要職を解かれている。
侯爵位という高位貴族の彼がそのことで不満を持ち反逆でも起こすとアーデン侯爵令嬢は考えているのかもしれない。
反逆を企てている証拠を集めろということなのだろうか。
でも、既にこれはアーデン侯爵令嬢がある程度の証拠を掴んでそうだ。
正直、相手が楽勝すぎて、これが私にしかできないこととは思えなかったが最低でもこなすタスクだと認識した。
「私、実は嘘をついているんです。帝国で要職に就ければ子供に最高の教育を受け入れられると聞いた親戚に2人の子を押し付けられて試験を受けたんです」
ロベル侯爵はよっぽど自分の魅力に自信があるのだろう。
自分の私への誘惑が成功したと勘違いして私の話を真剣に聞いている。
愚かな女のフリは一番得意だ。
私はただのエロ親父でしかないマラス子爵の自尊心を満たすため、13年も愚かで馬鹿な女を演じ続けたのだ。
「辻褄を合わせるように31歳だなんて応募書類に書いて、本当は成人したばかりの右も左も分からない小娘なのに⋯⋯」
私はまるで自重するような苦笑いを浮かべた演技をして、彼に救いを求めるように見つめた。
明らかに、彼の瞳に動揺が見られる。
こんなに頭の弱い男に素敵な顔面を与えるなんて神はお遊びが酷い。
この世界はただでさえ不公平なのだから、中身と外見くらいは比例させるべきだ。
「今とっても不安なの。実は先程帝国の宰相に任命されたのです。私は政治のことなど何もわかりません」
私がか細い声を使いポツリポツリと秘密を打ち明けるように彼に囁いた。
ロベル侯爵の目がきらりと光った。
やはり、彼は既に私が宰相に任命されるだろうことを知って近づいたのだ。
「きっと、敵国エスパル出身の女性宰相誕生ということで、皇帝陛下は侵略した他国出身の民に公平性をアピールしたいのでしょう」
彼に恋したふりをしたふりをしながら、その藍色の濁った瞳を見つめながら語る。
彼は帝国の貴族だ、おそらく私のような敵国出身の女宰相の誕生の人事の理由を公平性のアピールのためだと考えているだろう。
彼が自分の思想を私に告白しやすいように、私は人事に不満を持っているふりをした。
彼が爵位を剥奪されていないのは、おそらくアーデン侯爵令嬢に泳がされている。
皇帝陛下に反感を持つ人間を根こそぎ排除したいのだろう。
自分でも容易くできそうなのに、書類を見るに私にやらせようとしている。
彼女が私に渡した軽い課題の1つなのだろう。
「あなたを愛していますリーザ。可哀想にこれからは私があなたについていますよ」
ロベル侯爵が私を机に押し倒そうとしながら耳元で囁いてきた。