人生詩集・番外編

ドッペルゲンガー・3

ドッペルゲンガーを見るも見ないもあんた次第、もし見ちまったら?
そりゃあもう死ぬしかない、逃れる術はない、運命という奴。
だって死ぬ以外に奴の恐怖に堪えられるかい? およそジタバタしないこった、受け入れちまいな、死んじまいな、楽になりなよ……。

(沈黙……時間……スイサイドは行われたのか)

で、どう、旨く死ねた? そしたらあの恐ろしかったドッゲンの奴、途端に何か別のものに変わっただろ?
そいつを、そいつをさ、あんた自身の言葉で語って欲しいんだ、俺に教えておくれ。だって俺は奴を見たのに拘らずまだこうして生きている、死ななきゃいけないのに。代りに発狂の淵に立ってるこのザマさ。フフフフ、ヘヘヘヘ。
卑怯者ってか、臆弱者ってか、然り然り、一言もねえ……。

しかしもっとも、ドッゲンを見ただけでも本当はましってもんだ。
何も見ず、何も知らず、繰り返しの万華鏡の中に沈んで行く人間どものなんと多いことか。ちょうどさ、あれさ、あれだよ。例のクリスマスキャロルのスクルージ。
おのが業の銭を必死に抱えたままで死んで行ってしまう。この欲業の塊りを、この世の垢をごっそり付けたままで、あの世に行きたいのかい?あんた。
スクルージのように。
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