ヤンキーくんたちに溺愛されてます!
「私、女だからとか弱い人間だからとかそうやって人を見下してくるクズがこの世でいっちばん嫌いなの。…うちのお兄ちゃんが、そういう人だから。機嫌が悪くなるとすぐ物に当たったりお母さんに当たったり。うち、母子家庭だからお母さんを守れるのは私しかいないの。だから強くなった。強くないとこの世界で生きていけないから。お兄ちゃんが琥珀先輩に倒されたって聞いた時は、スカッとしたよ。ざまあみろってね。でも、誰かに負けたことがよっぽど悔しかったんだろうね。学校にも行かなくなったお兄ちゃんは、余計私たちに当たってくるようになった。だから、ただの八つ当たりになっちゃうかもしれないけど琥珀先輩のこともあんまりよく思ってないんだ。トップになる人は全然かっこよくなんてない。一番のクズだと、そう思ってる」


「…そんなこと、ない。たしかに俺は入学式の日に、月島や相染さんをバカにしてた。女なのに、なんでこんなところに来てるんだって。でもその日に知ったんだ。世の中には強い女もいるんだって。強い人に男も女もないって。だから、あの日のことは本当にごめん!虎さんの強さもどんな人だったかっていうのも噂でしか知らないけど、トップがみんなクズっていうのだけは違う。琥珀さんも虎さんよりの思考かもしれないけど…根は優しい人だと思う。琥珀さんのお兄さんの愛武さんが三年間トップを務めてたのは知ってるよな?愛武さんは今までのトップと違って、あんまりトップらしくはなかったんだ。力で人を支配することは一切なくて、見た目もぽわぽわしてるけど喧嘩は死ぬほど強かったし、いざって時には人をまとめるリーダー力もあって、そんなすげぇかっこいい人だったんだ。だから“伝説の人”なんだよ」



角刈りの瞳は真剣で、純粋な強い憧れの炎が宿っていた。



「…わかってるよ。ヤンキーの中でもそういう人もいることくらい、わかってる。だけど…」


「生きづらいならさ、私たちが変えちゃえばいいんだよ。私は黒鉄琥珀を倒してトップになる。それで、この学校を変えたい。それが今の私の目標なんだ」



二人はぽかーんと口を開けて驚いたように目を丸くしていた。



「バカみたいって思う?女の私が、って。自分でもわかってるよ。無謀なこと言ってるなって。でも、それしかないじゃん。待ってるだけじゃ人は、世界は変わらないんだよ。気に入らないなら自分で変えるしかない!」
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