ブレイクアウト!
#7 答えは簡単
「その答えは簡単じゃね?
俺が1位だったから、俺が【ちぃくん】だろ?」
タンクトップ姿で体育館の床にあぐらをかき、モバイル扇風機の風を火照った顔に当てていたジンが、当たり前のように呟いた。
「お前・・・! わかっていたのか!?」
アムよりもユーリよりも先に、ジンに噛みついたのはケントだった。
「何で早く言わないんだよ!」
「いや、まさか自分の首にホクロがあるとは思ってなかったし!」
のほほんとしているジン。なおも食ってかかろうとするケントをユーリが冷静に制した。
「ケント待て。
ジン、お前まさかアムとの記憶もないのに状況だけで自分がちぃくんだと思い込んでないか?
・・・おバカだから。」
「だな。ユーリの言うとおりだ。
アム、まだジンの言うことをまるっきり信じるな。
コイツには信じられる根拠も何もねえ。」
呆れ顔のユーリとケント。
ジンはムッとした顔で三人を仰ぎ見た。
「だって、アムの話だとそうなるんじゃないの? だいたい、ちぃくんってヤツの情報少なすぎね?」
ケントがうなずいた。
「確かにな。アム、他に何かないのか。」
「うーん。
頭がひとつで目がふたつ、口がひとつで体毛が薄くて肌は薄黄色・・・。」
「それ、だいたいの日本人に当てはまるやろ!」
たまらずユーリがアムの頭にスコーンとチョップをした。
「俺が質問するから答えてくれ。」
ユーリが警察の尋問のようにパイプ椅子を対面に置くと、アムと向かい合わせに座った。
「ちぃくんは首にホクロがあってダンスが上手いって言ってたけど、ダンスの大会には出てた?」
「家に金色のトロフィーがたくさんあったと思う。」
「ふーん、実力者か。で、最後に会ったのはいつ?」
「9年前じゃ。」
「だいぶ昔の話だな! ちぃくんのフルネームは分かる?」
「知らない。」
「背格好とか、特徴は?」
「背はそんなに大きくなかった。毛と目の玉はカラスみたいに黒い。」
ユーリの背後からニョキッと顔を出したジンが嬉しそうに自分を指した。
「やっぱ俺じゃん!」
「ジンは黙ってろ。」ユーリは肩越しにジンにアイアンクローをかました。
「それに、お前は三人の中でいちばん背はデカイぞ。アム、他に覚えていることは?」
「あと・・・ものすごく優しかった。」
アムが紡いだ言葉を噛みしめて、懐かしむようにちぃくんとの思い出に浸っている。
男勝りなダンスをする変わり者の印象は影を潜め、そこにいるのは一人の恋する少女だった。
「うちが大変な時に、生きる希望をくれた大好きな恩人じゃ!」
忘れていた感覚が何なのか、もう少しで思い出せそうな気がする。
アムは目を潤ませながら微笑んだ。
そんなアムを見たユーリが、気まずそうにポリポリと頭をかいてからジンとケントに話を投げた。
「だってよ。これを聞いて、お前らはどう?」
「9年前っていうと小学生くらい? 確かにダンス大会にはガンガン出てたけど、ちょっと記憶はあやふやだな。」
ジンが宙をにらんで言うと、2人も同時にうなずく。
「じゃあアムの言うとおり、ダンフェスで1位になったヤツが【ちぃくん】でいいんじゃね?」
ジンは、爽やかに重量級の爆弾を言い放った。
「そんな無茶苦茶な!」
「アムが1位ならどうするんだよ? 」
ユーリとケントは唾を飛ばしながら反論した。
激高する二人に対して、ジンは落ち着いた対応を見せた。
「そのパターンだと2位がちぃくんになるんじゃね? 番長の命令には逆らえないからな。」
「いい加減だな!」
苛立ちを隠さないケントをガン無視で、ジンはおもむろにアムに近づいた。
「だって、アムがそうしたいんだろう?」
不意に座っているアムの後ろからアムをギュッと腕に抱きしめたジンは、髪に顔をうずめて呟いた。
「アムはおひさまのニオイがするんだね。」
不意を突かれたアムは、心臓と身体の両方が跳ね上がった。
「にゃにに・・・⁇」
「俺はアムを気に入っちゃった。ダンスが上手くて一生懸命な女の子って、昔からタイプなんだよね。」
突然の公開告白に、顔が真っ赤っかになるアム。
どう反応していいかわからずカチンコチンにフリーズしたまま、ジンの体温を背中に感じていた。
ユーリは目を閉じてため息を吐き、眉間の辺りを指で強く押さえた。
「始まった・・・ジンは惚れっぽいからな。」
「ちょ、待てよ‼」
ケントが無理やりアムからジンをはがすと、ジンに詰め寄り胸ぐらをつかんだ。
「ジン、お前にはカノジョが居るだろ! アムも少しは抵抗しろよな!」
「ハッ、ケントは見かけと違ってマジメくんだからなー。ちな、俺はレンタルフリーでぇす。カノジョなんて一人もいっましぇーん。」
「ざけんな!」
ケントが本当に怒っているということに気がついたジンは、胸ぐらをつかまれたままニヤニヤと笑った。
「なんでお前が怒るんだよ。まさかケントもアムを好きになったの?」
「なんでそーなるんだよ。お前と一緒にすな!」
「じゃあ俺の意見に文句はないよね。
ダンフェスで1位になったら、この学園の番長の座とアムを頂く。」
「ユ、ユーリ、お前もなんとか言ってくれ!」
「ハハ、面白いじゃねぇか。副賞をつけることでモチベが上がるならアリだと思うな。
俺はジンに乗るぜ。」
「ったく、お前らときたら、人の心をなんだと思ってやがる!
しかも番長を決める崇高なるダンフェスに、色恋とか言ってんじゃねーよ‼」
ケントの怒りがMAXで爆発したのに、ジンとユーリは顔を見合わせて不敵に微笑む。
「・・・ッしゃあ、ダンス上等だァ‼
俺が優勝して番長になったあかつきには、くだらない男女交際は一切禁止してやるからな!
俺のマニフェストは【硬派な学園生活】! 守れねー奴らは留年だぜコノヤロウ‼」
俺が1位だったから、俺が【ちぃくん】だろ?」
タンクトップ姿で体育館の床にあぐらをかき、モバイル扇風機の風を火照った顔に当てていたジンが、当たり前のように呟いた。
「お前・・・! わかっていたのか!?」
アムよりもユーリよりも先に、ジンに噛みついたのはケントだった。
「何で早く言わないんだよ!」
「いや、まさか自分の首にホクロがあるとは思ってなかったし!」
のほほんとしているジン。なおも食ってかかろうとするケントをユーリが冷静に制した。
「ケント待て。
ジン、お前まさかアムとの記憶もないのに状況だけで自分がちぃくんだと思い込んでないか?
・・・おバカだから。」
「だな。ユーリの言うとおりだ。
アム、まだジンの言うことをまるっきり信じるな。
コイツには信じられる根拠も何もねえ。」
呆れ顔のユーリとケント。
ジンはムッとした顔で三人を仰ぎ見た。
「だって、アムの話だとそうなるんじゃないの? だいたい、ちぃくんってヤツの情報少なすぎね?」
ケントがうなずいた。
「確かにな。アム、他に何かないのか。」
「うーん。
頭がひとつで目がふたつ、口がひとつで体毛が薄くて肌は薄黄色・・・。」
「それ、だいたいの日本人に当てはまるやろ!」
たまらずユーリがアムの頭にスコーンとチョップをした。
「俺が質問するから答えてくれ。」
ユーリが警察の尋問のようにパイプ椅子を対面に置くと、アムと向かい合わせに座った。
「ちぃくんは首にホクロがあってダンスが上手いって言ってたけど、ダンスの大会には出てた?」
「家に金色のトロフィーがたくさんあったと思う。」
「ふーん、実力者か。で、最後に会ったのはいつ?」
「9年前じゃ。」
「だいぶ昔の話だな! ちぃくんのフルネームは分かる?」
「知らない。」
「背格好とか、特徴は?」
「背はそんなに大きくなかった。毛と目の玉はカラスみたいに黒い。」
ユーリの背後からニョキッと顔を出したジンが嬉しそうに自分を指した。
「やっぱ俺じゃん!」
「ジンは黙ってろ。」ユーリは肩越しにジンにアイアンクローをかました。
「それに、お前は三人の中でいちばん背はデカイぞ。アム、他に覚えていることは?」
「あと・・・ものすごく優しかった。」
アムが紡いだ言葉を噛みしめて、懐かしむようにちぃくんとの思い出に浸っている。
男勝りなダンスをする変わり者の印象は影を潜め、そこにいるのは一人の恋する少女だった。
「うちが大変な時に、生きる希望をくれた大好きな恩人じゃ!」
忘れていた感覚が何なのか、もう少しで思い出せそうな気がする。
アムは目を潤ませながら微笑んだ。
そんなアムを見たユーリが、気まずそうにポリポリと頭をかいてからジンとケントに話を投げた。
「だってよ。これを聞いて、お前らはどう?」
「9年前っていうと小学生くらい? 確かにダンス大会にはガンガン出てたけど、ちょっと記憶はあやふやだな。」
ジンが宙をにらんで言うと、2人も同時にうなずく。
「じゃあアムの言うとおり、ダンフェスで1位になったヤツが【ちぃくん】でいいんじゃね?」
ジンは、爽やかに重量級の爆弾を言い放った。
「そんな無茶苦茶な!」
「アムが1位ならどうするんだよ? 」
ユーリとケントは唾を飛ばしながら反論した。
激高する二人に対して、ジンは落ち着いた対応を見せた。
「そのパターンだと2位がちぃくんになるんじゃね? 番長の命令には逆らえないからな。」
「いい加減だな!」
苛立ちを隠さないケントをガン無視で、ジンはおもむろにアムに近づいた。
「だって、アムがそうしたいんだろう?」
不意に座っているアムの後ろからアムをギュッと腕に抱きしめたジンは、髪に顔をうずめて呟いた。
「アムはおひさまのニオイがするんだね。」
不意を突かれたアムは、心臓と身体の両方が跳ね上がった。
「にゃにに・・・⁇」
「俺はアムを気に入っちゃった。ダンスが上手くて一生懸命な女の子って、昔からタイプなんだよね。」
突然の公開告白に、顔が真っ赤っかになるアム。
どう反応していいかわからずカチンコチンにフリーズしたまま、ジンの体温を背中に感じていた。
ユーリは目を閉じてため息を吐き、眉間の辺りを指で強く押さえた。
「始まった・・・ジンは惚れっぽいからな。」
「ちょ、待てよ‼」
ケントが無理やりアムからジンをはがすと、ジンに詰め寄り胸ぐらをつかんだ。
「ジン、お前にはカノジョが居るだろ! アムも少しは抵抗しろよな!」
「ハッ、ケントは見かけと違ってマジメくんだからなー。ちな、俺はレンタルフリーでぇす。カノジョなんて一人もいっましぇーん。」
「ざけんな!」
ケントが本当に怒っているということに気がついたジンは、胸ぐらをつかまれたままニヤニヤと笑った。
「なんでお前が怒るんだよ。まさかケントもアムを好きになったの?」
「なんでそーなるんだよ。お前と一緒にすな!」
「じゃあ俺の意見に文句はないよね。
ダンフェスで1位になったら、この学園の番長の座とアムを頂く。」
「ユ、ユーリ、お前もなんとか言ってくれ!」
「ハハ、面白いじゃねぇか。副賞をつけることでモチベが上がるならアリだと思うな。
俺はジンに乗るぜ。」
「ったく、お前らときたら、人の心をなんだと思ってやがる!
しかも番長を決める崇高なるダンフェスに、色恋とか言ってんじゃねーよ‼」
ケントの怒りがMAXで爆発したのに、ジンとユーリは顔を見合わせて不敵に微笑む。
「・・・ッしゃあ、ダンス上等だァ‼
俺が優勝して番長になったあかつきには、くだらない男女交際は一切禁止してやるからな!
俺のマニフェストは【硬派な学園生活】! 守れねー奴らは留年だぜコノヤロウ‼」