DEAR 1st SEASON

プロローグ




あの頃のあたしは



どこかしら冷めていて



何に関しても臆病で



何をやっても中途半端で



もがけばもがく程、

弱音ばかり口から零れていて──……



……悲しいことに



マイナスの言葉を並べれば並べる程




あたしにはそれらが

どれもピッタリで……。





───たとえば。




水の中での魚は

泳ぐのが当たり前なら



人は生きていくのが

当たり前なの?



……そんなことをただ漠然と考えてみたりもした。




────もしも。


水の中で溺れている

魚がいたとしたら



それは間違いなく

あたしだと思う。



生きるべく場所で、器用に生きていけない。



与えられた環境に適応なんか出来ない。



そんな


生きていくことが

あまりにも不器用な魚。



それがあたし。



………ねぇ。


でも。


あなたに出逢ってからは



水の底から何とかあなたに近付きたくて



何度も何度も泳ごうとした


また生きていく意味を考え直したりもした。


少しでも“人間”らしくなりたかった。



───人魚姫のように。

< 1 / 370 >

この作品をシェア

pagetop