DEAR 1st SEASON

その日。



───夢を見た。


多分今までで一番怖かった夢。



底がどこかも分からない深い闇にあたしは立っていて。


右も左も上も下も分からない真っ暗闇の中。



走ったり歩いても、
その場所から本当に動いているのかも分からなかった。



その時微かに気づいた。



本当に怖いものは闇の中にある無かもしれないって…。




“闇”ももちろん怖いけれども。


その中の“無”はもっと怖かった。




だって……


なにもない。


自分がそこにいるのかも分からない。





──…でも。


ふと、遠くから光のような煌めきが見えた気がして。




──待って。


消えないで─…。





咄嗟にそう思ったあたしは、

“そこ”に向かって走り続けた。

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