DEAR 1st SEASON
走る度に風が頬をくすぶる。
ふいにシトラスの香りが風に乗ってやって来た。
………あ………
──この香り……
さっきあたしが目を閉じた瞬間に嗅いだ香りと一緒だ…。
庇ってくれたもん……ね……?
シトラスの香りが胸を締め付ける。
走っている間ずっと。
胸が苦しくて苦しくてたまらなかった。
───そのまま。
夜の闇にうまく紛れ、
あたし達は地元の公園のベンチに腰掛けた。
一際高い位置にあるこの公園は景色がよく、星が輝く夜空を一望出来る。
「…ここまで逃げたら、
もう追ってけーへんやろ」
そう言って朝岡さんがニッコリ笑う。
反対に、あたしは再び涙が溢れた。
「…………ごめん……」
「ん?何で謝んの?」
「だって──っ!…」
朝岡さんの笑顔に似合わない頬の傷。
それを見て申し訳なくて言葉が出なかった。
「──俺のは気にすんなって。
それよりさ、何より彩が無事で良かった」
「…………」
良くない…
良くないよ………。