DEAR 1st SEASON
水道の蛇口の前に立ち
慌てて鞄からピンクとレースがあしらわれたハンカチを取り出す。
────ザー……。
ハンカチが水に濡れ、
ある程度冷たさを帯びた。
それを急いで絞り、朝岡さんの元へと走る。
今度は朝岡さんがキョトンとした顔であたしを見つめた。
「血…出てるから…
拭くね──…?」
朝岡さんの唇から流れている血を拭き取ると─…
「───っ……」
よほど傷に染みるんだろう。
朝岡さんは苦しそうに声を殺していた。
ギュッと目を閉じ、
痛みに耐えている朝岡さんに涙が溢れそうになる。
絶対…
腫れるよ…
殴られる痛さやどうなるかも知っているからこそ、余計に申し訳なかった。
どうして…
庇ってくれたの?
「………ありがと。」
その疑問を口にする前に、朝岡さんは笑顔であたしを見た。