DEAR 1st SEASON

「……ってあれ?

彩も怪我してるやん?」




「……え?」




予想だにしていなかった朝岡さんの視線の先を追う。



─────ドクッ…。



心臓の音が朝岡さんに聞こえたんじゃないかと思うくらい大きく喚いた。





「……これは……」



その先の言葉が出ずに詰まってしまう。




朝岡さんが指摘したのは、あたしの深い切り傷が入った手首だった。





「──?

何かよう見たら顔も腫れてないか?」




「…………」



あたしが視線を外す。


あの黒い澄んだ瞳は全てを見通しているようで。



──怖かった。





「……何かあったん?」



朝岡さんが少し心配した声を出した。



視線を外していても分かる。


朝岡さんは痛いくらいあたしを直視している。
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