DEAR 1st SEASON



心臓が確実に早く動いている。


その度に体や顔に変化が出そうで、それを隠すのに必死だった。




「……これ…


一週間前に転んだの…

彩ドジでしょ?」





言葉がうまく繋がらないうえに引きつった笑い。



───朝岡さんは何も言わない。




…絶対に…

ウソだってバレてるよ…。





「…ほんまに?」


「……うん。」




「───誰かに殴られたとかじゃないよな?」




─────ドクッ…。




「……ちが…う……」




弱々しい否定。


否定しながら泣きそうになっていく自分を必死に制御する。





「…ならえぇよ。

よっぽど酷い転び方やったんやな。


さっ帰ろか?」





そう言って笑い、

朝岡さんはあたしの荷物を持ち、歩き始めた。





……どうして……?

どうして分かったの…?



ぶんちゃんはここまで鋭く気付いてくれなかったんだよ……?






───困った時に目の前に現れた二人の救世主。




それはぶんちゃんと朝岡さんかもしれない。






…そんな事を思いながら、あたしは朝岡さんの背中を見つめた。
< 130 / 267 >

この作品をシェア

pagetop