DEAR 1st SEASON


嘘でしょ──…。



何でよりによって今なの……?


前方には、前に中庭で見た見覚えのある女の人の姿。




──…やっぱり…




やっぱりあの人が彼女なんだ─…。


胃がどんどん収縮して痛みへと感覚を変える。



そんなあたしになんてお構いなしに二人はこちらに向かって歩いて来る。




────やだ………。




でもここまで来ると嫌でも動けなくて。



嫌でも“彼女”を見てしまう。


黒いロングにふわふわの巻き髪。



ハッキリした顔立ちで、背もあたしより高い。



そして──…。




「本当に?」



「うん」



「やだ、超面白いんだけど」




そう言って彼女とぶんちゃんは笑い合った。


二人の会話が耳にへばり付く。



この声──…。




やっぱり間違いない。


海でぶんちゃんと一緒にいた女の人の声だ─……。



「…………」




声を押し殺した瞬間。


スッと二人があたしの横を通り過ぎた。




──…その時。




あたしの耳にぶら下がっている、ぶんちゃんから貰ったピアスが……


とても虚しいモノに感じた。
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