DEAR 1st SEASON
「えぇっと…
とりあえず移動してえぇかな?」
「あ、うん…。」
朝岡さんがエンジンをかけて、ハンドルに手を掛けた。
車はゆっくりと動き出し、どこかに向かう。
……チラリ………。
思わず朝岡さんの姿を横目で確認してしまう。
夜の暗さから、いつも以上に朝岡さんが大人に見えて仕方ない。
…運転してる姿かっこいいな…。
無意識にそう思って、慌てて頭で否定した。
何考えてるんだろ。
ダメだよダメ。
あたしが好きなのはぶんちゃんなんだから──…。
好きなんかじゃない。
普段見ない朝岡さんの運転姿だから、動揺してるだけだよ。
そう自分に言い聞かせ、否定するのに必死だった。
この時、少しでも朝岡さんの事考える余裕があったら──…。
ねぇ朝岡さん。
過ぎた過去の自分に、
どうしても“もしも…”って言葉がこびり付いて離れない。
あの頃のあたしには、朝岡さんが大人過ぎたのかな。
余裕なんてなかったの。
あたしは切り替えも未だに下手だし。
“こうだ”って決めたら、それを曲げない頑固さもあったし。
頭が堅いから、
色んな方法も思い付かないし。
だからかな……。
朝岡さんの気持ちさえも、この時は全く読めなかったんだ。