DEAR 1st SEASON



ぶんちゃんに会うまでに、少しばかり鏡でチェック。



メイクは崩れてない?

髪は?


あっ香水……。


お気に入りのピンクのボトルを取り出す。


ずっとずっと愛用しているこの香水をシュッと一吹き。



ふんわりと甘い匂いがあたしを包む。


ボトルの可愛さだけで一目惚れして買ったこの香水も、いつしかあたしの勝負香水へと昇格していた。



フルーティーの香りは、もちろん彩好み。



このままテンション上げて、急いでぶんちゃんの元へ急ぐ。



瞳に映るぶんちゃんが段々大きくなる。


胸のドキドキも同じく大きく跳ね上がり、

いつしか爆発しそうな勢いだ。





「お待たせ……っ」


「帰ろっか?」




ぶんちゃんが笑う。

あたしもつられるように頬が緩む。




「うんっ……」



そう言って、ぶんちゃんの背中を追う。



『彼女の位置』。



隣りに肩を並べて、

同じ歩幅で歩く事。



どれだけ幸せな立ち位置なんだろう。



ここから見る景色は、

どんなに輝いているんだろう──…。




思う度に切なくなる。




この場所には、あたしは許されていない。




いつか………。

いつか隣で肩を並べて歩く毎日が当たり前になる。



…もしもそんな日が来たら。



もっともっと、
色鮮やかな視界が待っているんだろうか。




それとも──…


どんどん見慣れてしまって、色褪せていくんだろうか──…。



そんな、どうしようもない事を考えていた。

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