DEAR 1st SEASON



夕方近い時刻とはいえ、辺りはほんのり明るい。



あたしは夏の暑さは嫌いだけれど、冬と違って日が長いのは好き。


じんわり汗ばむ体を気にしながら、ぶんちゃんと帰路を歩く。




「明日から夏休みだねー。」



会話がなかなかないのに息苦しくなり、あたしが先に話題を振る。



「そうだね。
でも彩は補習組っしょ?」



「え゛っ!
何で知ってるの!?」



「ぶっ!!
マジで補習組かよ。

冗談で聞いただけなのに」




…………かぁぁぁっ。



はっ…ハメられた!

何て単純なの…。




「そーいうぶんちゃんは?
ないの?補習。」




口を尖らせそう言うあたしに、ぶんちゃんは何の迷いもなく口を開いた。



「ないよ。俺は彩と違って頭良いから♪」





…………なっ……。


失礼な。


てかぶんちゃん、頭もいい訳?



はぁぁぁ。


ルックスいい人って何でこうもステータス良く見えるんだろう…。




「じゃあ補習とかで無駄に課題こなさなくちゃだな。」


「…う、そうなの…。」


「何か手伝ってあげようか?」




……………!!



こ、これは。


願ってもいないチャンスの到来?



……美術館のレポ。


……誘ってみる?





「………あの…」



「うん?」





あたしは視線をキョロキョロさせながら、涼しい顔をするぶんちゃんに美術館の一件を口に出した。

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