DEAR 1st SEASON

朝、10時半。


今日から夏休みとは言うものの、社会一般では普通に仕事な訳で。


駅には沢山のサラリーマン達やOLが行き来している。


そんな中、駅の改札前には見慣れた姿──…。





「ぶんちゃん!」




思わず声を掛け、手を振るあたし。


ぶんちゃんはあたしの方角をじっと見つめ、手を振り返してくれた。



胸がくすぐったい。




「…おはよ。」


「おはよう♪」




ぶんちゃんには見慣れているけれど、私服姿には見慣れてはいない。


切符を買いながら、チラチラと私服拝見。



黒のシャツとパンツ。


手首にはブレスレットと──…。





────ドクン……。





瞬間的に滅入った。


視線は急に床。


胃がキュッと縮む。



さっきまでの笑顔もすぐに消える。




──だって。



ヘコまずにはいられない。



ぶんちゃんの左手の薬指に光っている指輪を、
どう無視しろというの──…。




ここにも。


“彼女”は存在を確立する。


どこにも。


あたしが入れる隙間なんてない。

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