DEAR 1st SEASON
それからのあたしは全然まともなんかじゃなかった。
レポートを書く手が尋常なく震えるし。
受け答え出来ていたのかも覚えてないし。
どこをどう歩いて回ったのとかも全然…。
ただ一つだけ覚えているのは──…。
“繋いだぶんちゃんの手の暖かさ”。
何か…。
よくある好きな人と手を繋いだらこの手を洗わないって気持ち分かるかも。
──でもその反面。
またフツフツと疑問が心を覆い尽くしていく。
こんな事、手慣れてるのかな。
誰にでもするのかな。
どうして手を繋いでくれるのかな。
彼女とも……
こうやって手を繋いでいるのかな──…。
彼女いるのに、
どうして──…?
…やっぱり分からない。
ぶんちゃんが分からない──…。
──それから。
美術館から家に帰宅するまでの間、二人はずっと手を繋いでいた。
あたしの心に、疑いの種を植えたまま──…。