DEAR 1st SEASON



「……でも?」



ドクン、ドクン─…。


動揺しないって決めた筈なのに、あたしも意志が弱い人間だ。



…いや、動揺しないで普通にいられる方が可笑しいか……。



ぶんちゃんが、そっと続きを語った。


閉ざしていた、重い口を開けて──…。





「…なんていうかな…


……まぁ……


“裏切られた”かな…。」





ふっと悲しく笑うぶんちゃんに。

何故か、他人であるあたしまでもが悲しくなった。



裏切られた……?




「一体どうして…」




「───最近、他のヤツとしてるの見たから…」




────…は……?




今でも忘れられない。



ぶんちゃんが、あんなにも凍てついた氷の微笑を見せたのを。





「───…してるのって……。」





「キスだよ。


…公衆の面前の駅でね。



あいつを送った後に、
言い忘れた事あって戻ってみたら……」





そこには、裏切り行為があったのだという。





「数秒前までは俺と話してたのに、戻ったら違う男と……。



まぁ……


まんまと、“裏切り返し”された感じかな。」




ぶんちゃんはそう言って付け加えた。



“人を100%信じきれない”、と。



あたしが思っていたことと全く同じ事を口にしたんだ──…。

< 175 / 274 >

この作品をシェア

pagetop