DEAR 1st SEASON


「まさかあいつが裏切る立場になるなんて、想像もしてなかったよ。」




……確かに、そうだ。


その彼女は、ぶんちゃんの何を見てきたんだろう。


何を思って、相談したんだろう。


不安にさせられた気持ちは、自分も経験しているはずなのに……。





「だから、付き合ってないに等しいよ。」




乾いた笑いを見せるぶんちゃんを直視出来なかった。



……酷い。酷いよ。



あたしが望んでも届かない場所を手にしているのに。



ズルいよ──…。




「変な話してごめんな。
帰ろうか。」




そう言ったぶんちゃんの後を歩き、気付いてしまった。



左手の薬指に光っていた指輪が消えていた事を。


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