DEAR 1st SEASON



まさか、いやでも…。


さっきから肯定と否定の繰り返し。


一人悶々としているところに




「彩!」



「えっ、え?」




ビックリした返事は超マヌケ。


慌てて顔を上げ、緩んだ笑いをぶんちゃんに向けた。




「……帰ろう?」



「……ん…」




自然と絡む指先も、
何もかも全てが心臓になったみたい。






夕日を見ながら、
ぶんちゃんがおもむろにカメラを取り出した。




その日の夕日は、

限りなく広がる赤一色で。




───カシャッ!




…ぶんちゃんがその一瞬を残す気持ちが分かる。




「カメラ、好き?」



「うん。綺麗な景色とか撮っちゃうかな。」




「そっか、あたしも─…」




───カシャッ!





……………。





「今、撮った?」



「うん、何か可愛くて。」



「…もぉ!!!」





───カシャッ!





あたしもすかさずお返し。





無理やりカメラを奪い、
あどけないぶんちゃんの横顔を撮った。




「──!あ、こら!」




「へへーん♪
お返しだよっ★」






ふいにぶんちゃんが、カメラを持っているあたしの手に触れた。





──キュン…。




甘酸っぱい音が、胸いっぱいに弾けて。







「───…彩…」





名前を呼ばれる、

ただそれだけなのに。



背中がゾクッと震える。





全身で、自分の名前を受け止めた。

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