DEAR 1st SEASON



──…詰まり詰まり、あたしが話し終えると。


朝岡さんは彩の頭を優しく撫で、ゆっくりと言葉を選ぶかのように話し出した。





「──…彩は、ぶんの何なん?」




「……え…

彼女…だよ…」




「──じゃあ堂々と胸張っといたらいいねん。


何も彩が逃げる事とちゃうやろ?



──今は彩が彼女やねんから。




睨んできたのかって、僻みとかちゃうんかな。



彩も彩で睨み返したら良かったのに。」





……………




ぽんぽんと頭を撫でながら、ニコッと笑う朝岡さんを見て。



…どれほど、抱えていた問題が小さいか分かった気がした。



これは自分の“自信”の問題なんだ。


いつまでも過去ばかり見て“今”から逃げてちゃダメなんだ。



逃げるんじゃなくて、

それを未来に繋げなくちゃダメだったんだ──。




「……朝岡さん…

ありがとう。」




今ね、大事な事に気付けた気がするの。



やっと。


やっと前を、今を、ぶんちゃんを信じようと思ったの。



当たり前な事は、

当たり前過ぎて。



時には意味さえも分からなくなる。



簡単そうに見えて、実はすごく難しい。




あたしだけじゃ、

きっとずっと迷ってばかりだった。



いつまでもウジウジしたままだっただろうな。




「……あ、あれぶんちゃうか?

彩の事探してるんとちゃう?」



──朝岡さんの言う通り。


ぶんちゃんが人込みを掻き分けて、周りを見渡している。





「────行っといで?」




朝岡さんは笑顔であたしの背中を押した。

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