DEAR 1st SEASON



「…だ、大っ嫌い…?」




まさかの聞き間違い?

いや、違うみたい…。




「あたしはね、
最初は純の事があんまり好きじゃなかったの。



純が悪い訳じゃないんだけど…。

人気者っていう感じが好かなかったの。



多分…

純もあたしの事、好きじゃなかったと思う。」




「…じゃあどうして…?」




あたしが不思議そうに聞くと、チカさんはゆっくり紅茶を飲んでから笑った。






「恥ずかしい話ね…?

ある日、あたしが飼ってる犬が死んじゃって…


一人で我慢出来ずに泣いてたんだ。



そしたら──……




『どうしたん?』




って……


一人泣いてるあたしを、見つけてくれたの。


あたしが嫌ってるの関わらずにさ、ずっと話聞いてくれたんだ…」




……………。




「優しいですね…」



「…………」




──…分かっていた。




朝岡さんは優しい。



きっと、

朝岡さんは困っていたり

泣いてる人を見捨てたり出来ない人なんだ。




現に、あたしがそうだから。

あたしも、何度も助けられているから…。





「それからかな?

あたしの純を見る目が変わって来て…



……いつの間にか好きになってたの。



かっこよくて、明るくて優しくて、面白くて。


ちょっと不器用だけど…

人間らしい純が、

あたしは大好きなの。」




…………



──何故だろう。




チカさんが話す、


朝岡さんの過去。


朝岡さんという人間性。


朝岡さんへの思い。



分かっていたはずなのに。




あたしは………


うつむいて言葉が出なかったんだ……。
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