DEAR 1st SEASON



「……うわっ…寒……っ」




冷たい風が吹く中、足早に外を歩く。



吐き出された白い息が、空に舞って消えた。




「──…あ。」





視界には朝岡さんの車。



……シルバーのエスティマだ。





中からみんな、
しきりに笑顔で手を振っているのが見える。





「おっじゃましまーす♪」


「彩、おはよ♪」



キョーコがマサシの隣から、幸せそうな笑顔でこちらを見た。




「おはよ♪」





──…必然的に空いている席はぶんちゃんの隣。



あぁ緊張する……。





「──…彩、おはよ」




──…ドキ……。




「…おは…よ」




…やっばいなぁ。



いつになったら、
ぶんちゃんの顔をまともに直視出来るんだろうか。




「彩ちゃーん♪

おっはよ★

今日も気合い入ってるねぇ★」




くるりと振り向いたのはチカさんだ。




──…助手席。


朝岡さんの隣から。




「純、見て♪
彩ちゃんめっちゃ可愛いニットワンピ着てるよ♪」




「んー?」




バックミラー越しに、朝岡さんの視線があたしを捕らえる。






─────…あ。




笑った………。






「こら!!純!
そんな目で彩ちゃん見るな!!」




「…お前が見ろって言うたんやんけ…」




チカさんと朝岡さんがいつものようにそう言い合って、みんなが吹き出した。





──…何だか、

今日はあの助手席が特別に見える。




あたしも前にあの席に座った事があるんだっけ。




…何だか分からないけれど。




ただボーっとそんな事を考えていた。

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