DEAR 1st SEASON



これ程までに、小さくて弱々しいチカさんを見た事がなかった。



チカさん……


チカさんは誰より何より笑顔が似合う人でしょう?



涙なんか似合わない。


似合わないよ……。





でも……



聞かなくちゃ…。






「どうしたんですか…?」




この問い掛けによって、チカさんの顔は更に悲しみで歪んだ。





「──…ごっ…ごめ……」





──…そうやって。




ひどい嗚咽を漏らし、
必死で息をしようとしている姿が痛々しい。




ねぇ、何が──…



何がそんなにチカさんを苦しめてるの?





「────…」





チカさんは深呼吸して、
涙を拭った。



白いけれど悲しみに染まった吐息が緊迫した空気に溶ける。





「───……純が……」





………え?



何?



朝岡さんが何?




耳を澄まし、

聞こえて来たのは









“…純に……




好きな人が




出来たって──…”







この世で、一番笑えない冗談だった。


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