DEAR 1st SEASON


チカさんを見送り、
あたしは一人で曇り空の中を歩いていた。



頭に朝岡さんの笑顔が浮かぶ。



……あの優しい朝岡さんの事だ。


きっと何か理由があるに違いない。



そう…思いたい。

思っていたい。


あたしはまだ二人の可能性を諦めたりは出来なかった。


だから───…。

 



────PRRRR……。





思い切って、朝岡さんに電話を掛けた。


お節介だと怒鳴られてもいい。





でも……


あたしに何か出来る事ない?



朝岡さん
一人で苦しんでない?




本当は……


悩んでるんじゃないの?




ずっと、


ずっと一人で。





ねぇ朝岡さん…


あなたは優しい人だから。



一人で何でも抱えて、
悩みを口に出さない人だから。



チカさんを極力悲しませたくないと思っているんじゃないかな。



傷つけるのが怖いから。





ねぇ……


でも………

でもね───…?



自分を犠牲にしたりなんかしないで…?




二人とも傷つくだけだよ…。






──今、あたしが出来る事。




これしか思い付かない。


あたしには話しか聞けないかもしれない。





……でも



あたしが辛い時は何度も朝岡さんが助けてくれたでしょう?



だからあたしも朝岡さんを助けたいよ──…。





────その時だった。





───…プツッ……。







『────はい……』





ケータイから、

ひどく打ちのめされたような朝岡さんの声が聞こえた。

< 243 / 370 >

この作品をシェア

pagetop