DEAR 1st SEASON


胸をえぐられた感覚が全身を襲う。



息なんかする暇があれば、少しでもこの現実を理解したい。




チカさんがグッとあたしの両肩に手を付く。







「……返……して──…………っ!




返してよ………




純を返して…っ!!!!」





チカさんが涙をいっぱい溜めて一瞬あたしを見つめた。





「返してよ!!!

お願いだから──…!




返しなさいよぉ─………………!」





ドン…ドン…とあたしの肩を殴るチカさんの手が震えていた。





それでも動けなかった。





少しでもチカさんに触れたら、チカさんが崩れそうだったから。







ねぇ…チカさん……。







チカさんの瞳から見えるあたしはどう映って見える?





──…卑怯者?



泥棒猫?




いずれにしても、

あたしは憎い塊に見えて仕方ないよね…。





でも───…




ごめんね………





あたしの瞳からチカさんはね……………






もう水が目を満たしすぎていて──…






チカさんが………






見えないんだ───……。

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