DEAR 1st SEASON


「…ほんと…笑える…

だからあの時も──…」




チカさんが独り言のように吐き捨て、くるりと向きを変えて歩き出した。




待って…



違うの……





「チカさん…っ!待って!



あたし……

あたし本当に何も知らなかったの!」





とっさにチカさんの前に回り、そう声を張り上げた。



話を聞いてもらうために腕にしがみつく。




かっこ悪くてもいい。






「お願い…!信じて…」




「うるさい!

言い訳なんか聞きたくない!離して!!!」





━━━━バシッ!!!





頭に固い何かが直撃した。





「───…いっ……!」




凄まじい痛み。





同時に、その衝撃で地面に不様に転んだ。






チカさんは、容赦なくあたしを上から見下すように睨み付ける。





──…そして。




チカさんは…




あの優しい、あたしがよく知っている微笑みを浮かべた。





更に……




転んだあたしに手を差し伸べてくれている。





「──…チカ…さん…」





瞬時にホッと安心した。





分かってくれた──…?





手を差し伸べるあたしに、

チカさんはまた瞬時に表情を変えた。





そして…………。









「あんたなんか……







死んじゃえばいいのに。」









────パンッ!







……差し伸べていた手が





大きく宙を舞った。


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