DEAR 1st SEASON



──そこからは…


正直、今でもどうやって家に帰ったか覚えてはいない…。



気づけば、自分の部屋だった。



カッターナイフを持ち、

手首に当てる。





─────………。






『かっこよくて優しくて明るくて面白くて…



ちょっと不器用だけど、

人間らしい純があたしは大好きなの。』





にっこりと幸せな笑顔を浮かべるチカさん。





『───純は…

モテるからさ……


時々周りが心配になるんだよね……』





少しヤキモキしながらも、照れて笑うチカさん。





『──…クリスマスプレゼント、お互い頑張って渡そうね♪』





その小さな願いが叶うことがなかった、あの日。





『──純に……



好きな人が出来たって…』





涙と悲しみに支配されるチカさん。





『ありがとう、彩ちゃん。
あたし…怖がらずに、ちゃんと聞いてみるね…?』






最後に微笑み合った瞬間だった。






『何であんたなのよ!』





…予想出来なかった真実。





『あんたなんか……




死んじゃえばいいのに。』






────……そうだ。


あたしなんかいちゃいけないんだ。






「───…ど…うしてぇ……………!?





どうして────…っ」





どうして、気づけなかったんだろう。


どうして、生きているんだろう。


どうして、存在しているんだろう。



どうして、どうして───…








“彩ちゃん”







チカさんの笑顔、涙、言葉、仕草。





━━━━ザクッ…





一つ一つを思い出す度に、一つ一つ手首に新しい傷が増えていった。

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