DEAR 1st SEASON



──…どれくらい時間が経ったのだろうか。


枯れることない涙を拭い、顔を上げ時計を見つめる。





────夜10時半。





「うそっ──…!!
もうこんな時間…

ぶんちゃんごめん…!」




ぎょっとするあたしを見て、
ぶんちゃんは目尻を下げて笑った。




「いいよ、落ち着いた?」



「………ん…」




“良かった”と笑うぶんちゃんを見て、心に柔らかな風が吹く。




「……帰る…?」



手首の止血具合を確かめるぶんちゃんに、答えて欲しくない事を聞く。




「……ん……?」




正直に言うと、帰ってなんて欲しくない。


ぶんちゃんのシャツをギュッと握る。




……今日は偶然親がいなかった。



一人転勤したお父さん。


あたしのお母さんは週に一度、身の回りの事が気になるらしく転勤先へ行く。




今日はその日。



家の事情は大丈夫だから。



だから……



だから一人にしないで。




今日は。


今日だけは……。






「…俺も帰りたくなんかないよ…。


心配で彩を一人になんて出来ない……」





頬を撫でてくれるぶんちゃんが愛しくて愛しくて。





少しだけ……



笑えた──…。

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