DEAR 1st SEASON



「彩、腹減ってない?
コンビニ行こうか。」



「…うん…」




ぶんちゃんが優しく微笑むと、クローゼットの中からコートを取り出しわざわざ羽織らせてくれた。




「寒いからマフラーもな。」




そう言ってマフラーを口当たりまでぐるぐる巻きにされ……





「……息出来ないよ…」



「あはは。
でも寒いのバカになんないぞ?

ほら、行こう。」





ぶんちゃんが手を差し出す。



その手を取り、
二人はゆっくりと冬の夜道を歩き始めた。





本当は……


お腹なんてちっとも空いてないし。



食欲もないんだけど…。




それより、何より。



せっかく二人で過ごすのに手料理の一つくらい作れば良かった……。





気が利かないあたしとは逆に、ぶんちゃんは…。





「ミルクティーは?
あと彩はプリン好きだよな?

あとは……
寒いからラーメンとか……。」





──コンビニの中。




ぶんちゃんはカゴの中にあたしの好きな物ばかりを入れていく。




ミルクティーやプリン、
ポッキーやポテチ。

ラーメンやおでん、おにぎりなど……





「……ふふっ」


「?何だよ彩。」



「……だって……

いくらあたしが好きだからって、こんなにも食べきれないよ…?」




ガサガサと大きな袋を持つぶんちゃんを見て、ふいに笑いが込み上げて来た。





「………」



「何……?」



「……いや、やっぱり彩は笑顔が似合うなって。」



「………」



自然に出た笑顔に少々驚きながらも、疑問には思わなかった。



笑顔になれるのは、

ぶんちゃんがいるからだよ………。




あなたが好きだと言ってくれる笑顔は、あなたによって作られるの。



あなただから、この笑顔にも意味があるの。




ありがとうね……?


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