DEAR 1st SEASON



──…そりゃあたしだって知りたいよ…?



まだ知らない体温もあるし。

見たことがない顔もある。


あたしはぶんちゃんをまだ何も知らない……。



“知りたい”、という気持ちの反面──…


“怖い”、という感情が行く手を先走る。





『お前に何回も電話した理由なんてな、こーゆーことしたいからに決まってんだろ』




──…思わず目を瞑りたくなる過去。


頭の中を亮が支配する。


おかしいよね──…。


体の傷はもう消えたのに、思い出す度に体が疼くよ……。




『乗り越えられた』。




……そう思っていたのに。


あたしは結局全然乗り越えていない。




“逃げている”の勘違い。




勘違いも甚だしい。


封印して、思い出さないようにして。


都合よく乗り越えられたと思い込んでいるだけだ、きっと。



この手首に浮かぶ傷が何よりの証拠じゃないか。


手首に増え続けている、無数の悲鳴。






「……………」





やっぱ気持ち悪いよ…。


自分で見てもそう思うもん。





──…ぶんちゃんに、



全てを見せるのが怖い。


好きだからこそ、辛い。


越えられない性別。


乗り越えたい壁。



さらにあたしの気持ちがそこに交錯する。





「……どうしたらいいの…?」




ぐちゃぐちゃだ─…。

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