DEAR 1st SEASON



それから──…。


あたし達は本当にたわいない話ばっかりした。




…チカさんの事には─…

二人とも一切触れなかった。



…けれど、全く気まずくなる事もなく。




きっと。



朝岡さんとは、もともと話が合うんだと思う。



口を開けば、
どちらともなく話題が耐えないし。


笑いだって止まる事がない。


一瞬でも訪れる沈黙さえ、重くもないし気まずくもない。




どちらかというと、

その沈黙も心地良いかもしれない──…。




─────…………




二人が食事を終え、再び車内に戻る。



───パタン。


朝岡さんがドアを閉めて、静寂が二人を包む。




「………」



…何故か急に落ち着かなくなり、朝岡さんを見つめられない。






「──…彩、まだ時間いける?」



「──…大丈夫…」



「ちょっと彩と行きたいとこあるんやけど、えぇかな…?」




「…行きたいとこ…?」






朝岡さんは何も言わずに微笑み、車のキーを回した。


エンジンがかかり、車内に音楽が掛かる。




───と、その時だった。





「────…♪」





………えっ……?



音楽と共に、耳を疑う声が聞こえる。



初めて聞いた…

朝岡さんの歌声……。



何て──…

透き通った声なの──…?




かかっているのはB'zの、“Calling”。





信じられない事に…


朝岡さんの声がB'zの稲葉さんの声とピッタリ重なっている。





うっ──…


ウソ…でしょ……?



もう一度、耳を澄まして聞いてみる。




……………。




間違いでは、ない。



上手いとは予想していたけれど……



ちょっとこれは─…



予想以上過ぎじゃない─…?


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