DEAR 1st SEASON




「………っ」




涙が止まらない──…



溢れて止まらない─…





「何で彩が泣くねん…

泣きたいのはこっちやって」




「…ごっ…ごめん…」





朝岡さんはそれでも優しい笑顔を零してあたしを抱き締めた。



好きだという思いが全身をかけて伝わってくる。






「……すっきりした。


──ありがとう…」







朝岡さん──…


ねぇ朝岡さん──…



こんなあたしを、あなたはどうしてこんなに好きになってくれたんだろう。




この疑問は、あたしには解けない。



けれど、嬉しかったよ…。




あたしも朝岡さんの事は特別なの。


ピンチになれば、いつも助けてくれた。



本当に…

あたしのヒーロー。



でも…

チカさんを傷だらけにしてしまった。



あたしはチカさんに取って悪魔だろう。




………でも



消えない。



消せない。



消える事はない。



消してはいけない。



一生消してしまうことはない。




朝岡さんとチカさんの二人の想いを。




──…みんなそれぞれ傷ついた。




でも傷ついた中に、

みんなそれぞれ手に入れた物がある。




負う傷は深くても…



あたしはそう信じている。



ありきたりかもしれないけれど、




“出逢えてよかった”。



“ありがとう”……。

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