DEAR 1st SEASON
第13章 羅針盤
第13章 羅針盤
第13章 羅針盤
「あっつー…」
一気に上昇する体温。
滲む汗。
耳を塞ぎたくなるセミの大合唱。
「あー!!もうセミうっさーい!!!」
ナナが窓から鳴き続けるセミに一喝。
「………って言って鳴き止んでくれたらいいのにねー。」
「あっはは。
ナナマジウケるんですけど」
あたしはパタパタと内輪で風を扇いだ。
──夏が来ていた。
「えー。
そしたら今から進路調査表を配るぞー!!」
先生がセミの声に負けない大声を張り上げた。
……進路?
進路だと?
首を傾げる。
…まだ高2じゃん。
特に進む道も進路も決めていないあたしは当然、白紙で出そうと思っていた。
周りのみんなも、ナナもみんなそうだと過信していたから。
───…が……。
予想外。
みんな真剣に鉛筆でカリカリと文字を刻んでいる。
………あのおちゃらけたナナでさえも。
……うそでしょ!?!?
「ちょっとナナ…
何書いてんの?」
「何って…進路?」
珍しくまともな返事を返すナナから慌てて進路調査表を奪う。
そこにはズラリと名を連ねる専門学校が……
「ナナねー。
いっぱいなりたいのあって迷ってるんだよ。
美容師でしょ、ネイリストでしょ、メイクアップアーティストとか♪」
「…………」
ガーン……。
頭を金槌でかち割られた気分。
周りのみんなも色々悩みながら用紙を埋めようとしている。
悩む要素もないあたしって…
一体どうすりゃいいの…?