DEAR 1st SEASON
彼女なのに…
何もかも知ったつもりでいただけで、あたしはぶんちゃんの事何にも知らない…。
何にも……
話してくれない…
話して欲しい事だってあるんだよ…?
だいいち、ぶんちゃんは口数が少ないから余計に不安になるんだもん…。
勤務が終わり、ナナと一緒に歩いていた時。
たまらなくなってナナに喋り出してしまった。
「──…ナナ、
あたしってそんなに頼りない?信用ない?」
「はい?どうしたいきなり。」
「…だってさ…
ぶんちゃんってあんまり何も話してくれないから不安になってきて…」
夏の虫が鳴く夜道。
昼間より少しだけ涼しくなった風に吹かれながら、ナナは振り向いた。
「んー…
彩が頼りないとかじゃなくってさ…?
人には話したくないことがあるんじゃないかなぁってナナは思うよ…?」
……話したくないこと…?
「だって彩もさ…
話したくなかったでしょ?
その…
リストカットとか亮の事とか──…」
「…………」
──そういえば…
そうだ…。
「高山さんが自分から話す勇気が出たら彩に話してくれるんじゃない?
だからあんまり深く考えない方がいいよ…」
──…そう…だよね…。
あたしもぶんちゃんになかなか話せなかった…
いくらぶんちゃんでも嫌われるんじゃないかって不安で不安で……。
時期が来たら話してくれるかな…?
「うん…そうする…」
「だぁーいじょうぶ♪
それよりナナの悩みも聞いてよっ♪」
「…何?珍しい。」
ナナは嬉しそうに笑い、こっそりとあたしに耳打ちしてきた。
「…ナナ、ユウキさんに恋しちゃったかも♪」
「えっ…えぇっ!?!?」
ナナは上機嫌でスキップして歩き出す。
「ちょっ…ナナ!!
待ってよ!!」
あたしも幸せそうなナナを事情聴取するために追い掛ける。
…きっと大丈夫。
話してくれる。
そう信じていたあの頃…。
───…ただ…
ただね──…?
ぶんちゃんに聞く事を怖がらずにいたら──…
少しは……
未来を変えられたの…?