DEAR 1st SEASON




目が勝手に引きつけられる。



大きい太鼓を2、3人で力強く叩く人もいれば、小さな太鼓を一人で操る人もいる。




───……あれ……?




センターで一番目立った法被を見つけた。





「──……あ………」




それは一瞬だけ、その人が背を向けたから分かった。





黒地に浮かぶ、金色に輝く虎と龍。


見るところ、

その人以外の人は背に何も描かれていない。





────あの人だけ。





「───…ねぇ!!

あの真ん中にいる人かっこよくない?!」




前に座っている子達がザワザワ騒ぐ。




………もしかして……


───…入学式に会ったあの人かもしれない。





でも





「───…んー…?」



目が悪くて、同一人物か確認出来ない……。




「……ねぇナナ、そんなに真ん中の人かっこいいの?」



たまらずナナに聞いてしまう。



ナナはセンターを見つめ続けながら……




「───あの法被軍団って、太鼓部だったんだねー!

真ん中の人、やっばい!

ダントツかっこいいよ!」



「───うそ?」



「ほんとほんと!

ありゃヤバい感じだよ~!!」




………え~……!!!!


あたしも見たい~………。




もしかしたらあの人なんじゃないかな……?



あぁ、視力回復して欲しい~!!!!!!



見えない見えない見えない~!!!!!!





───……そんな複雑な思いを抱えながら。


太鼓部のオープニングステージは、あっという間に終わってしまった。
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