DEAR 1st SEASON



「───和太鼓同好会によるオープニング演奏ありがとうございました。続きまして───…」




新入生歓迎会の司会が始まる。



和太鼓……かぁ……



他の部の発表が始まったけれど、正直あんまりハッキリ覚えてもないし、見ても聞いてもいない。



────見ていたのは。



目立たないようにステージ裏から太鼓を降ろして、静かに体育館を去る太鼓部の人達。




「…………」


目を凝らしながら、まるで何かに惹き付けられたように、一人目立つ黒と金色の背を見つめていた。





─────……



あっという間に新入生歓迎会が終わり、入部届が配られる。




「───ナナ、何か良さげな部活あった?」



「え?ナナは部活なんか入らないよー!
もちろん帰宅部帰宅部♪」



「えー!!そうなの?」


「うん、ナナは部活するよりバイトしたい派なの♪

彩は?何か入るの??」




「………ん~…」

 


浮かんだのは……



───そう、もちろん太鼓部。



……でもなぁ……。



あの人が気になるから入部だなんて理由、ふざけてるかなぁ……。



……うー……。



パラパラとクラブ紹介の冊子を開きながらそんなことを考えていた。

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