DEAR 1st SEASON



───…初めのうちは10分置きに。



そして段々数分毎、最後には何十秒毎に電話が掛かっている始末。



……本当に……
何か用事でもあるんだろうか──…?



……それにしては留守電にメッセージは残っていないし…。




「……何なの……」


読めない亮の行動が怖い。


お互いこの春から高校も離れているのに……。


今さら話なんてない──……。




「……忘れよう……。」





けれどその日を境に、亮からの着信は途絶える事がなかった。





─────…ピッ!



ひたすら無視、電源を切って、亮からの電話は出ないように凌ぐ日々が続いた。




───…そして……



何とか気分を切り替えようと、入部届を握り締め顧問の先生の元へと向かったんだ。





「────え?

太鼓部に入部?」



そう言った顧問の先生は入学式の時に見掛けた、あの年配の先生。




「───はい!

太鼓部に入部したいんです!」




あたしがそう言うと、先生は心底驚いた表情をしている。




「……そうか、今年に入って入部したいと言ってきたのは君が初めてだよ。

今年はもう誰も入部しないんじゃないかって諦めかけててね……。


───あ!

そうだ、この入部届は直接部長に渡してくれるかな?」




「えっ?」



「私は本当に“顧問”という名前と形だけでね。

実際太鼓部を動かしてるのは部長なんだ。」





「……は、はぁ…」




「──部長は2年5組の“高山”ってやつだよ。

これはそいつに直接渡してくれるかい?」




───予想外……。



先生から入部届を返されるなんて。




“高山さん”ってどんな人なんだろうか。


入学式の時に見た、あのかっこいい人?


それとも歓迎会の時に見た、虎と龍が描かれていた法被の人?



もしかしてどちらでもないかな───…?

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