DEAR 1st SEASON


晴れ渡る空の下。


もうすぐ散りゆく桜が舞う中で、今日はみんなで基礎練習。

“基礎練習”とはいっても、ただ走ったり筋トレしたりするだけ。


太鼓を叩くには、それなりの体力がいるらしい。



ジャージに着替え、

いよいよ基礎練習開始。




───まずは



「じゃあ筋トレからいこうか。まずは2人ずつペアに───……」



……ペア、か……。



えーと、とりあえず同期の子と……




────と、その時。





「───桜井さん、俺とペアになる?」



「───え?」




……そう。


声を掛けてくれたのは、まさかまさかの高山さんからだった。




「えっ?!

いっ、いいんですか?!」


「うん、新入生との交流大事だから♪」




そうやって、笑いながら高山さんは手招きしてくれた。




──…う、ウソでしょ…。



ジャージ姿の高山さんを間近で見ては、信じられなくて胸が震える。



………夢みたい……。




「───いい?

じゃあ背中押すよ?」



「…は、はい…!」



────ドキドキドキ…




背中を押してくれる手が大きい。


筋トレしながら体が触れるたび、顔が緩む。



……もう叫んじゃいたい。





「───ぶんちゃーん、

筋トレ終わったからあたし達先に走っとくね♪」



「ん、後から俺らも追うわ。」




───“ぶんちゃん”?


アミさんが高山さんの事をそう呼んでいた。





……そういえば。


チヒロさんも高山さんのことを“ぶんちゃん”と呼んでたよね……。



……あだ名かな?



何で“ぶんちゃん”なのか由来とか気になる…。




「“ぶんちゃん”ってあだ名なんですか?」



「うん。


…じゃ、走ろっか!」




「あ、はい!!」




……タイミング逃しちゃった……。


また今度聞こう……。





───……ねぇぶんちゃん。



この時、あなたはあだ名の由来を何気ない顔で流したね。



きっと知られたくなかったんだよね。



今思えば、まだ出逢って間もない二人にはまだまだ壁があったね。



あたしが“ぶんちゃん”と呼べる仲になるまではもう少し先の事。



ぶんちゃんというあだ名の由来を知るのはまだまだ先の事──……。

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