DEAR 1st SEASON
今日1日の基礎トレがあっという間に終わった。
「……ふぅ……」
……つ、疲れたぁ……
基礎トレだけでも結構ハードなもんなんだな~…。
基礎トレだけでこんなん言ってて、太鼓なんか本当に叩けるのかな……。
「───わーい♪
チヒロさん、ありがとうございます♪」
「いいよーん♪」
みんな着替えを終え、それぞれが談笑しているのが聞こえる中。
「───彩ぁ~っ♪
ねぇ、メルアドと番号教えてよっ★」
キョーコがニコニコしながらケータイを持って来た。
「───うんっ★!!いいよっ!!」
「わぁい!!!!♪ねぇ彩はどこの使ってるの?」
「えっとねぇ~…」
キョーコと番号を交換しあいながら
────チラリ……
ふと、高山さんのケータイに目が行ってしまった。
シルバーのケータイ。
ストラップは控えめ。
───…しかも、ナイスタイミングで今まさにマサシと番号を交換している。
「……………」
今このタイミングで、ノリで番号聞いちゃおうか……。
────…ドキドキドキ…
……ふと、番号を聞いたその後を考えてみた。
高山さんと、必要があればいつでもメールのやり取り出来る。
声だって聞ける────…。
────…うん。
ここはイチかバチか、ケータイに頼るしかない。
……この春に買った、真新しい白いケータイ。
まだメモリもそんなに増えていないケータイを、ギュッと握り締めて。
───…同時に、消え入りそうな勇気も握り締めながら。
「……あのっ──…」
心臓爆発寸前になりながら、ゆっくりと高山さんに近づいた。