DEAR 1st SEASON


「……でもさぁ……

口実なんて思い浮かばないよぉ……」



────パチン。


全くメール打つ内容が出てこなくて、パカパカとケータイを開いたり閉じたりを繰り返す。





「……う~ん……」



すぐ口実思い付く、やわらかい頭が欲しいなぁ……。



「んなもん何でもいいじゃんっ!!!!★

また筋トレ一緒にしましょうねとか……


───あ!!!!

今度太鼓の叩き方教えてくださいとかっ♪」




──……おぉ……。

なるほど…。

ナナすごいな。


その柔軟な頭が羨ましいし、ちょっと借りたいくらいだよ。



「……えーっとぉ……」



────ポチッ、ポチポチッ…。


……一字一句、丁寧にメールを打つのがこんなに緊張するだなんて。


気持ちを込めて打つ、初めてのメール。


たかがメール一通送るのに、かつてこんなにも緊張して悩んだ事があるだろうか。



────…答えはもちろん“ない”。




「………うーん……。」



やっとの思いでメールを作成したのはいいものの。



なかなか送信ボタンを押せず、手が行き場なくあっちへ来たりこっちへ来たりと彷徨っている。



────…ギュッ……。



送信ボタンまで辿り着くも



「うわぁぁぁやっぱ無理無理無理っっ!!!!!」




────パッ!



緊張と不安に負けてしまって、親指が引っ込む始末。




────…そんな時。




「───えいっ♪!!!!」


「───あ゛ぁっっっ!!!!!!!」



────ピッ!



ナナがイタズラに笑い、送信ボタンを押してしまった。

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