DEAR 1st SEASON





────ハァハァ─……。



どれだけ走ったんだろう。


どれだけの距離かさえも定かじゃない。




気づけば、とある公園に居た。


辺りは夕闇に覆われそうな、赤色一色で。



──…もう夕方…?



時間の感覚が今イチ分からない。




亮の家に行ったのは確かお昼過ぎだったはず─…。

逃げ出してから、かなり彷徨ったということだろうか。



事実、
あたしにはあれから記憶がハッキリとない。




夕焼けに染まる公園に、吸い込まれるように入っていく自分。



帰りたくなんてなかった。


気がつけば、逃げ続けた足には血が滲んでいて。




途中何回か転んだ為、

爪も剥がれていた。



───洗わなきゃ……。




ふらふらとトイレに入り、曇った鏡を見てギョッとした。



殴られ、パンパンに腫れきった顔─…。



鼻や口から血がうっすらと筋を作り、青くなった自分の顔。


原形なんかないんじゃないかってくらいだった。



変わり果てた自分の姿に更に涙が溢れる。


そこから見る自分の顔は、もっともっとグチャグチャで。



情けなくて、無様で。



「────……ふ………ぅ───…。」




水で顔を洗いながら、
声を押し殺して泣いた。
< 89 / 370 >

この作品をシェア

pagetop