DEAR 1st SEASON
【…桜井さん?】


「……」



声は出ない。

出るのは大粒の涙。




───…もう無理─……。



ただ、少しでも安心したくて声を聞きたかっただけなのに。


…なのに、逆に声を聞いてもっと苦しくなるだなんて──…。



これ以上、通話を続けるのは困難だ。



横に“彼女”がいるってだけで、自分の存在価値が許されない気がした。





──…ここにも、あたしの居場所はない。





「………じゃぁ…………」



今にも消えそうな声でそういうのが精一杯だった。




【──…ちょっ…】



────プツッ。


……………ツーツー……。




あっけなく切れる電話。




電話をする前は。


きっと電話を切った後に、

少しでも救われて温かい気持ちになっているだろうと“予想”していた。





───……どうして、



電話をする前よりずっとずっと心が痛いの?





どうして




こんなに苦しいの──……。
< 96 / 370 >

この作品をシェア

pagetop