DEAR 1st SEASON

咄嗟に目に入ってきたのは、机に置いてあるカッターナイフ。


こんなに涙で前なんか見えないのに、カッターナイフだけはヤケにクリアに視界に入ってくる。



「……………」




震える手で冷たいカッターナイフを手に取り、しばらく眺めていた。




────カチカチッ──…。



部屋に響く無機質な音。



銀色に光る刃先がどんどん姿を表す。



ナイフを見つめながら、最後に思った事は変わらなかった。





あたしなんか、生きる場所がない。





生きていく価値もない。


いらない存在。




誰も必要としてくれない。





──…そんなくだらない理由ばかり並べて──…。
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